平成27年6月 ご挨拶
曹洞宗には宗歌があります。「花の晨に片微笑み 雪の夕べに臂を断ち 代代に伝うる道はしも 余処に比類は荒磯の 波も得よせぬ高岩に かきもつくべき 法ならばこそ」と言う歌詞です。
お釈迦さまはある時、大勢のお弟子さまの前で、一本の蓮華の花をかかげられました。それは、この世のあらゆるものが互いにかかわりあい、生かし生かされて存在しているということを、言葉ではなく華を拈ずるという行動で示されたものでした。このとき、お弟子のひとり、迦葉(かしょう)さまだけがお釈迦さまのこころを理解されて微笑まれたのです。お釈迦さまはその時、「私が修行して得たところの正法眼蔵涅槃妙心(しょうぼうげんぞうねはんみょうしん・正法の真髄である仏心)を、いま摩訶迦葉(まかかしょう)に伝える」と宣言されました。「花の晨に片頬笑み」とは、このお釈迦さまがお弟子の摩訶迦葉さまに正法を伝えたという「拈華微笑(ねんげみしょう)」の故事をうたったものです。
お釈迦さまから迦葉さまへと伝えられた正法は、またそのお弟子さまへ、そしてインドの二十八祖達磨(だるま)さまへと伝えられます。達磨さまはさらに中国へ正法を伝えられることを決意され、長い旅路のはてに中国へと渡られ、以後面壁九年(めんぺきくねん)といわれる坐禅を修行されることになります。達磨さまと、中国の二祖となられる慧可(えか)さまの出会いには、大変有名な説話があります。
達磨さまが嵩山(すうざん)少林寺において坐禅の修行を続けられていた時のことです。それは12月9日、身も切れるほどの厳冬のことでした。慧可さまは、遠いインドから来られた達磨さまに道をもとめられ、その切なる願いに腰まで雪に埋もれながら、自らの体を傷つけるほどの強い思いを示されたと伝えられています。
達磨さまは慧可さまの熱意に応え、後に慧可さまにお釈迦さまからの正法が伝えられることになりました。「雪の夕べに臂を断ち」は、こうしてお釈迦さまの正法が中国に根を下ろした次第を述べているのです。
大本山總持寺二祖峨山韶碩禅師650回大遠忌の今年に今一度、私たちは、摩訶迦葉さまの微笑みと慧可さまの断臂(だんぴ)のありように、身命をかけた求道の心と、そのようにして伝えられてきた正法の尊さを静かに学びたいものです。
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